サンダガ⚡

さくさく軽快2chまとめサイト

【ガヴドロ】ラフィエル「サターニャさんがいじめられているのを見てしまいました…」

1:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:18:57.140ID:QdVdDnwD0.net
※長い
「サターニャさん!」
「わぁっ!?な、何よ、ラフィエル!」
その日の昼休みも、私はいつものようにサターニャさんのところへ行きました。
私が声をかけると、サターニャさんは警戒して、私と距離を取ろうとします。
そして体を手で抑えながら…横睨みで私のことをじっと見つめてくるのです。
ああ、愛おしい。こんなにも愛らしい玩具…もといお友達は、後にも先にもサターニャさんだけでしょう。
「そんなに怯えなくても大丈夫ですよ♪一緒にご飯食べましょう?」
「信用ならないわよ!そんなこといってアンタ、この前も…!」
「いいじゃないサターニャ。みんなで食べた方が美味しいわよ?」
「私は一人の方が好きだけどな」
ナイスジョブです、ヴィーネさん!
今日も楽しい一日になりそうです。
2:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:20:54.255ID:QdVdDnwD0.net
サターニャさんと出会ってから、灰色のようだった日々がたちまち色付きました。
天界にいた頃の、退屈で、つまらない日々も悪くはありませんでしたが…やはり、私は本質的に、刺激を求めているようです。
「サターニャさんはまたパンだけですか?」
「な、何よ…別にいいじゃない。美味しいんだから!」
「サターニャさんがそれでいいならいいんですけど…」
そこで私は、おもむろに私の作ってきたお弁当から、唐揚げを一つ持ち上げます。
「サターニャさんがどうしても、というなら、私のオカズを分けて差し上げようと思っていたんですが…」
「んが…!」
ふふ、サターニャさんは分かりやすいですね。もっともっと虐めたくなっちゃいます。
「今日の唐揚げ、結構美味しくできたんですよ。昨日、国産地鶏が少し安くなっていので、奮発しちゃって…」
「こくさん……?じどり……?」
サターニャさんが生唾を飲む音が聞こえてきました。…さぁ、そろそろサターニャさんが強がりを始める頃ですが…。
4:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:22:13.795ID:QdVdDnwD0.net
「……っ!ふ、ふざけるんじゃないわよっ!」
来ましたっ!
「ククク…この私を誰だと思っているの?そう、我こそは、大悪魔胡桃沢=サタニキ=マクドウェル…!天使の施しなど、受けるわけが―――」
……。
……あれ?
どうしたんでしょう。
「……………」
サターニャさんは、急に何かに気付いたような素振りを見せると、すっかりそのまま固まってしまいました。
不審に思い、ガヴちゃんやヴィーネさんの方を見ますが…2人とも、呆気に取られたような顔をしています。
「……いえ、いただくわ」
「え?あっ…!」
その不意をついて、サターニャさんは、私が箸で持ち上げていた唐揚げにかぶり付きました。
そう、私の箸ごと。
5:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:24:20.139ID:QdVdDnwD0.net
「!?さ、ささささサターニャさん!?」
その時の私の動揺っぷりといったら、みっともないものでした。
だってサターニャさんのその行動は、全く予想外のものでしたし…。その衝撃が覚めないうちに、「サターニャさんと関節キスをした」という事実が、頭の中に押し寄せてきたんですから…。
「さ、サターニャ!?な、何やってんのアンタ!」
「え、な、何って…くれるって言ったから貰っただけじゃない」
「いや、お前がそれを素直に受け取ったのがおかしいんだが…」
「そ、それもそうだけど……ああもうっ!ラフィを見なさいよ!すっかり放心してるじゃない!」
別に放心しているつもりはなかったのですが。
私以上に慌てるヴィーネさんを見て、サターニャさんはけろっとしたものです。頭の上に疑問符を浮かべながら、彼女は唐揚げを飲み込みました。
「ごくん。まぁ、なんのことかよくわかんないけど…」
「美味しかったわよ、ラフィエル」
6:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:25:11.733ID:QdVdDnwD0.net
そんなことを柔らかく微笑みながら言うものですから、私としてはたまったものではありません。
心臓がうるさいくらいに高鳴ります。
体温が一気に上がっていくのが感じられます。サターニャさんと初めて出会った時に感じた、あの高揚感とも違う、おかしな感情が、私の神経を昂らせます。
「………し」
やっと私の口をついて出たのはそんな言葉。
「失礼しますっ!!」
ダダダダダッ。
気付けば、私はお弁当箱を抱え走り去っていました。
「ちょ、ちょっとラフィ!?」という、ヴィーネさんの呼び声が聞こえた気がしましたが…私は構わず走り続けました。
その日一日は、サターニャさんと顔を合わせることが出来ませんでした。
サターニャさんのことを考えるよりも…自分の気持ちを鎮めるのに、精一杯でしたね。
だから、その時は気付けなかった。
今思えば、サターニャさんは、確かに「何か」に怯えていました。
7:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:26:20.263ID:QdVdDnwD0.net
「…おはよー」
「おはよう、ラフィ」
「あ、おはようございます、ガヴちゃん、ヴィーネさん」
次の日の朝、私はサターニャさんに会いませんでした。
なんでもその日、サターニャさんは日直だったそうで。そういうところはヤケに律儀なのも、サターニャさんの魅力ですね。
「ラフィエルはやった?例のレポート」
「そういえば…そろそろ提出期限ですね」
レポートというのは、天界が私たちに定期的に課す、調査書のようなものです。確か今回の調査対象は、『女性にウケるカラオケソングベスト10』だったはず…。
死ぬほどどうでもいいですが、仕送りに直結する以上、しないわけにはいきません。
8:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:27:42.554ID:QdVdDnwD0.net
「ガヴちゃんはどうなんですか?」
「こういうことに関しちゃ、私には優秀な情報屋が付いてくれてるからな」
「ネットゲームで知り合った人たち?」
「歌とか映画とか、オタク臭いことはだいたいあいつらに聞けば、いい感じの答えをくれるんだ」
「怒られるわよアンタ…」
「そういうことを気軽に調べられるのは素直に羨ましいですね」
「ん?お前らだって、クラスでは普通に友達多いし、そういうの聞きやすいんじゃないのか?」
「いや、高校生に独身女性にウケるカラオケソング聞いてどうすんのよ…」
「ですね。学校外でも顔は広い方ですが、やはり大人の人に調査をするのは時間がかかります。暫くは、放課後にサターニャさんで遊べそうにないです…」
天使学校次席卒業、それも、天界屈指の名家である白羽家の私には、それ相応の働きが求められます。
死ぬほどどうでもいいことでも、きちんとしたクオリティのものを出さなければ、それだけで家の名前にキズが付いてしまいます。
面倒ですが、エリートとはそういうものです。
13:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:28:51.755ID:QdVdDnwD0.net
「…そのサターニャのことだけどさ」
そんな風に切り出したのはヴィーネさん。
「本当にどうしたんだろう?何か、昨日はやけに大人しかったというか…」
「さぁ。腹でも痛かったんじゃないの」
「そんな簡単なことならいいのですが…」
そう返しながら、確かに昨日のサターニャさんはおかしかったな、と、昨日の出来事を思い返そうとします。
その度に、サターニャさんのあの笑顔が浮かび上がってきて、思考がうまく纏まりません。
「だ、大丈夫!?ラフィ、顔真っ赤よ!?」
「……だいじょうぶ、だいじょうぶです。お話を、続けて……」
「いや、どう見ても大丈夫じゃないだろ…」
結局、サターニャさんについてのお話は、そこで打ち切りとなりました。
15:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:34:39.916ID:QdVdDnwD0.net
ああ、これではレポートどころではありません。
サターニャさんの顔を思い出しただけで、サターニャさんを思い浮かべただけで、思考回路はショート寸前、泣きたくなるようなムーンライトというようなものです。
これまで、サターニャさんは私にたくさんの興奮を与えてくれました。
ある時は犬とじゃれ合い、またある時はガヴちゃんにあしらわれ…。
私はそうしたサターニャさんを見るのが好きで、サターニャさんに付き纏っていたはずです。
なのに、この気持ちはどういうことなのでしょう。
その自問と同時に、昨日調べたラブソングが頭の中で流れ始め、また私の顔は熱くなります。
…しばらく、サターニャさんに会うのはやめましょう。
早くこの気持ちに整理を付けないと、自分が自分でなくなってしまう気がした私は、そう決断しました。
17:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:39:04.921ID:QdVdDnwD0.net
結論を言えば、その決断は大失敗でした。
サターニャさんを避け始めて三日、私の気持ちに整理がつくことは無く。
サターニャさんに会いたい、その気持ちだけが、日増しに膨らんでいくばかり。
三日間の忍耐の末に得たものといえば、「三日間もサターニャさんに会えない」という状況を作り出してしまった、自分への自己嫌悪のみ。
もうこれはどうしようもないな。四日目にして、ようやくその結論に辿り着いた私は、お昼休み、サターニャさんのクラスを尋ねてみる決心をします。
意を決して1年B組に飛び込んだ私は、サターニャさんの姿を探します。
お昼休みはたいていガヴちゃんの席にいるので、探しやすいのは探しやすいです。ガヴちゃんの席は教室の一番後ろ、廊下から少し覗けば見えます。
さて、勇気を出すんです、私!
喝を入れ、教室の中を覗き込みますが―――
―――そこに、サターニャさんの姿はありませんでした。
18:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:40:25.122ID:QdVdDnwD0.net
「………?」
サターニャさんどころか、ガヴちゃんの姿も、ヴィーネさんの姿もありません。もちろん、少し覗いた程度なので、教室の中にはいるかもしれませんが…。
不思議ですね。いつもはガヴちゃんの席で、ヴィーネさんたちと一緒に、楽しげにお昼タイムを過ごしているのですが…。
私のいない三日間の間に、何かあったのでしょうか。
こういう時は、千里眼ですね。
私はゼルエルさんほど天使力はないので、見たい対象をはっきり見ることは出来ませんが…居場所探知くらいならば楽勝です。
では、サターニャさんを探しましょう。
19:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:44:49.844ID:QdVdDnwD0.net
ーーーー
ガチャリ。
扉を開けると、爽やかな風が吹き込んできます。
空は見事なまでの快晴。靡く髪を手で抑えながら、うららかな陽気にあてられた屋上を、まずはぐるりと見渡します。
「……ラフィエル」
「あ、いました。サターニャさんに…ガヴちゃん♪」
サターニャさんは、ガヴちゃんと一緒に屋上でご飯を食べていました。端にあるベンチに、二人仲良く座りながら。
思いの外、私はサターニャさんを見て取り乱しませんでした。鼓動は不自然なまでに速くなっていますが…なんとか、表情には出ていないようです。
この三日間、サターニャさんを思い返しては悶える、という行為を繰り返し続けたおかげで、少しは耐性がついていたのかもしれません。
20:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:48:28.461ID:QdVdDnwD0.net
「久々ですねー。会いたかったですよー」
「ちょっ!く、くるしっ…!や、やめなさいっ!」
なんだか気の大きくなった私は、どさくさに紛れて、サターニャさんを後ろから抱き締めちゃいます。
サターニャさんの髪はいい匂いがして、私の頭をそれ一色に染め上げます。
サターニャさんの体はふわふわとしていて、それでいて華奢で……脳みそが蕩けてしまうほど心地いい。ずっと抱き締めていたくなります。
「ほんと久々だな。何してたんだよ」
「ちょっと…私情がありまして」
「いいからさっさと離しなさいよっ!!」
まさか、「サターニャさんの顔を見るのが照れ臭くて避けてました」などと言うわけにはいかず、曖昧にそう返します。
21:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:50:14.365ID:QdVdDnwD0.net
サターニャさんの抵抗もきつくなってきたので、名残惜しいですが、サターニャさんをもふもふするのもこれまでです。
「…全く、久々に見たと思ったら油断も隙もいわねアンタ…!」
「寂しかったですかー?」
「そ、そんなわけないじゃないっ!」
そういって、ぷいっとそっぽを向いてしまうサターニャさん。そんな仕草もいちいち可愛いです。
「そういえば、どうしてこんな所で?教室に行ってもいないから探しましたよ」
ひとしきりサターニャさんを堪能したので、気になったことを尋ねてみることにします。
「……まぁ、暖かくなってきたし、屋上ってなんか憧れるからって、サターニャが…」
「……?そうなんですか」
その歯切れの悪さに、私は違和感を覚えました。そもそも、あのガヴちゃんが、サターニャさんに言われたからと、いちいち食事の場所を変えるでしょうか…?
22:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:55:04.100ID:QdVdDnwD0.net
「それと、ヴィーネさんはどこへ?」
それも疑問の一つです。いつも、食事はガヴちゃんと、サターニャさんと、ヴィーネさんの3人でとっていたはず…。
ジュースでも買っているのでしょうか。
「………」
私がその質問を投げかけた途端、ガヴちゃんとサターニャさんの顔が、みるみる曇っていきました。
聞いてはいけないことを聞いた。
そんな雰囲気が漂います。
「……ヴィーネとは、ちょっと喧嘩した」
「そうですか」
それ以上のことを私は聞きませんでした。
ヴィーネさんとガヴちゃんが喧嘩なんて、珍しいこともあるものです。恐らく、ここでご飯を食べているのも、それが原因なのでしょう。
ヴィーネさんのことですし、大した喧嘩ではないとは思いますが…。
レポートがひと段落ついて、まだ仲直りが出来ていないようなら…手を打ちましょうかね。
23:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)10:59:18.024ID:QdVdDnwD0.net
「……さぁっ、食事も済んだことだし、勝負よガヴリール!!」
「……サターニャ」
このサターニャさんの勇ましい声も、随分と久しぶりな気がします。
「うふふ。今度は何をするおつもりですか?」
「今日はこの、昨日魔界通販で買ったコレで―――」
その時の私は、心の底からほっとしていました。
三日前、私を動揺させた、あのサターニャさんの様子がおかしかったことは、なんだかんだで私の心にずっと残り続けていました。
だから、こうして、前のようなサターニャさんを見ることが出来て…私は、心の底から安堵していたんです。
そんな、私の陰で。
ガヴちゃんは一人。
泣きそうな顔で、サターニャさんを眺めていました。
私は最初その意味がわからなくて、気のせいだったと割り切ってしまいます。
24:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)11:05:37.516ID:QdVdDnwD0.net
昼休みが終わり、放課後になる頃には、私はすっかり吹っ切れていました。
昼休みのサターニャさんとガヴちゃんのやり取りを見て、はっきりと気付いたからです。
私は面白いのも可愛いのも、全部ひっくるめてサターニャさんを愛していると。
サターニャさんを愛す。それこそが私の存在意義で、行動理念である、と。
もう何も怖くありませんでした。終業のチャイムが鳴ると、私は三日間の空白の時間を取り戻すため、サターニャさんを誘いにB組を訪れます。
しかし、サターニャさんはいません。
…おかしいですね。もう帰ってしまったのでしょうか。それでも、サターニャさんは帰り支度が早い方ではなかったはず…。
千里眼で場所を探します。すると、サターニャさんはトイレの個室にいることがわかりました。
…トイレですか、なら仕方ないです。
締切が近いのに、ただでさえ三日間も無駄にしてしまったのです。今日から全力で仕上げないと、レポートは到底間に合わない。
私はサターニャさんを置いて、一人で家に帰ることにしました。
25:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)11:12:15.351ID:QdVdDnwD0.net
そんな日が、何日か続きます。
昼休みは屋上で、3人でパンを齧るというのが恒例になっていました。
ヴィーネさんは一度も屋上に姿を見せません。それどころか、朝に会うことも無くなりました。
登校の時も、ガヴちゃんとサターニャさんの、3人になることが多くなりました。
始業前は、サターニャさんとガヴちゃんの2人で、自動販売機の前にたむろしているのを見かけます。
サターニャさんは、図書室で気になる魔導書を見つけたようで、毎日図書室に通ってそれを読み耽っているそうです。
出来ることなら私もそれに付き合いたかったですが、レポートの進捗が控えめに言ってヤバいので、やむなく一人で下校をします。
ガヴちゃんは、私と帰ろうとはしませんでした。
26:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)11:19:40.121ID:QdVdDnwD0.net
サターニャさんは、毎日のように高笑いを上げながら、私に最高のエンターテイメントを与えてくれました。
それとは対照的に、ガヴちゃんはみるみる消沈していきます。
「ヴィーネさんとうまくいってないんですか?」とは、聞きませんでした。首を突っ込むなら徹底的に、というのが、私の信条だからです。
ですが、そろそろ手を打たないとマズいですね。サターニャさんがいくら場を盛り上げようとしても、ガヴちゃんがその調子では、サターニャさんが可哀想です。
サターニャさんは、元気の無いガヴちゃんのために、必要以上に明るく振舞っています。
サターニャさんをずっと見てきた私にはわかります。多かれ少なかれ、サターニャさんは無理をしている。
丁度レポートも終わりました。今日の放課後から、ヴィーネさんたちに少し探りを入れてみましょう。
いきなり直接聞くのは流石に憚らられます。まずはサターニャさんから詳しく話を伺う必要がありますね。放課後、図書室へ行ってみましょう。
27:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)11:21:49.254ID:QdVdDnwD0.net
ガラガラ。
図書室に着きました。
錆びた紙の臭いが鼻につきます。けれど、それもまた古書の魅力だという人もいますね。
金曜日の図書室は、翌日が休日ということもあってか、そこそこの人で賑わっています。
勉強をする人、本を読みふける人、窓際で陽の光を浴びながら寝ている人…。図書室の使い方一つとっても、個性が表れているようで面白いです。
さて、そんな中サターニャさんは…。
いえ、この中から手探りで探すのも面倒くさいですね。千里眼使っちゃいますか…。
はい、見えてきました。
サターニャさんがいるのは……。
図書室から、だいぶ離れたところにある…トイレですね。
28:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)11:27:44.292ID:QdVdDnwD0.net
「え……?」
そういえば、そのトイレは数日前。
私が一度、千里眼で「視た」場所です。
「……?いえ、なんで……?」
どくん。どくん。
心臓が跳ねるたび、針金で体を締め付けられるような痛みが私を襲います。
身体中から出る、嫌な汗が私の肌をつたいます。
サターニャさんがいるトイレは、図書室からだいぶ離れた場所にあります。
もちろん、図書室のすぐ側にもトイレはあります。
このことが指す意味。それは。
…図書室に行っていたというのは、ウソだった?
なぜ、サターニャさんはそんな嘘を?
そもそも、毎日トイレで何を?
謎が謎を呼び、疑問に対する答えは疑問で埋め尽くされ、頭の中はぐちゃぐちゃです。
「とりあえず…!」
私は、一歩を踏み出します。
「サターニャさんのところへ行かないと…!」
30:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)11:32:37.204ID:QdVdDnwD0.net
いても経ってもいられなくなった私は、神足通を使い、サターニャさんがいるというトイレに駆けつけます。
最初に聞こえてきたのは、笑い声。
「ギャハハハハ!可愛い可愛い!可愛く撮れたわよ胡桃沢さん!」
顔も知らない女子生徒。ただその佇まいから、そこそこのカーストはあるように思いました。
次に聞こえてきたのは、泣き声。
「……もう、やめ、て」
弱々しくそう呟いたのは。
制服も、ブラも、パンツも。
身ぐるみ全てを剥がされ、頭から足までびしょびしょに濡れた、サターニャさん。
31:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)11:36:04.804ID:QdVdDnwD0.net
「ぁあ~?なに?聞こえないんですけど?」
「……もう、やめて。どうして、こんなこと…」
「言ったでしょ?アンタがムカつくからだって」
「………」
「毎日毎日、周りの目をはばからずにきゃあきゃあきゃあきゃあと……うっさいのよ、ウザイのよアンタ」
「朋美言い過ぎ~w」
「ここまでやっといて今更遠慮することないっしょw」
「それもそうよねw」
「…まぁ、後はアンタの反応が面白いってのもあるけどね」
「っ……!」
「クックック……この写真、どうしようかな。クラスの男子にばら撒く?それともネットにあげちゃう?」
「……んぁっ!や、やめっ…!」
ダンッ!
「だーかーらー。うっさいんだって」
「ぅあ……」
「この写真ばら蒔かれたくなかったら…ちゃんと私らの言うこと聞かないとダメよ?」
「www」
「マジ外道www」
「………」
33:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)11:43:23.971ID:QdVdDnwD0.net
私は、一部始終を黙って見ていました。
最初は、起こっていることをにわかには受け入れ難く、ただただ脳が、立ち尽くすことしか許してくれませんでした。
だけど、起こっていることを理解するにつれ、私の中に一つの感情が沸き起こってきました。
私は驚くほどに冷静でした。
ただ冷静に、自分の中に沸き起こる感情を制御し、じっと時を待ちました。
取り返しのつかないことにならないよう。じっと、冷静に…自分の心に言い聞かせていました。
「殺してはいけない」と。
そして…その時は来ます。
34:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)11:49:18.335ID:QdVdDnwD0.net
「……ぁ?アンタ誰?つーか何見てんの?」
「え?誰かいんの?」
「……うげ、あれ白羽じゃん」
ゴミクズ共が、次々と私を認識し始めました。
その中の一人は、私の名前を知っていたようです。有名人は辛いですね。
「………!ラフィ、エル……?」
そうして、私に気付いたサターニャさんは、そう私の名前を呼びます。
それは救いを求めていたのか、…それか、来てしまった私を咎めるためだったのか…真相は定かではないですが。
スイッチが入るには、それだけで十分でした。
「こんにちは、はきだめの鶴に群がる、蛆虫以下の寄生虫さん」
「ああ!?なんだお前!」
威勢よくそう切り出してきたのは、恐らくはリーダー格の女子生徒…仮に、ゴミAとでも名付けましょうか。
ゴミBやゴミCたちは、私に対して完全に萎縮しているようです。ならば、このままゴミAを無視して続けましょう。
「ミジンコ以下の学習能力すらないあなた達には、何を言っても無駄でしょうが」
「私のサターニャさんに、汚い手で触るな」
35:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)11:53:41.643ID:QdVdDnwD0.net
そこからは一方的でした。
物騒なことは好きではありませんでしたが……これも神が私に与えた試練だと思い諦めます。
それはもう、徹底的に潰しました。
もう二度と、サターニャさんを虐める気なんて起きないくらいに。
最悪、もう二度と学校になんて来れなくなるくらいには、痛めつけてやりました。
あ、もちろん怪我はさせてませんよ?
こんなことで停学や休学を食らうのは馬鹿馬鹿しいですからね。
怪我をしない程度に…関節を極めたり。
怪我をしない程度に…首を絞めたり。
そんなことを、相手が泣き叫んでもおかまいなく続けました。相手の意識がなくなるまで。
たぶん、その時の私は正気じゃなかったように思います。ただ胸の中の感情に任せるままに、したいままに、暴れました。
ただ、あくまで私は理性的でした。越えてはいけないギリギリのラインを見極め、制裁を与え続けます。
36:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)11:59:47.146ID:QdVdDnwD0.net
一通りゴミ掃除が終わり、聞こえるのは私の吐息だけになったあと。
ふと隣を見ると、怯えた表情のサターニャさんが、裸の体を抱き締めながら、ぷるぷると震えていました。
その姿を見た途端、私の心に巣食っていた「怒り」はたちまち消えてしまいます。
代わりに来たのは、「後悔」と「懺悔」と「自己嫌悪」でした。
気付くチャンスはいくらでもあったはずです。
元気のないサターニャさん、屋上でのお昼ご飯、いなくなったヴィーネさん、空元気のサターニャさん、放課後に消えるサターニャさん。
この情報だけでは気付けなくても、もっと早く、ここまで事態が進む前に、真実に辿り着くことは出来たはずです。
そうすれば、こんなやり方をしなくても良かった。いくら痛めつけたところで、いじめなんてものが無くならないというのはわかっていました。
標的が私とサターニャさんの2人に増えるだけ。そんなことはわかっていました。けれど、私は抑えることが出来なかった。
しょうもない劣情に振り回され、何の得にもならないレポートの作成に追われ。
挙句招いたのが、このどうしようもない結末です。
ああ、私はなんて、どうしようもない。
37:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)12:01:47.610ID:QdVdDnwD0.net
「ぁ……」
サターニャさんと目が合います。
サターニャさんは今にも泣き出しそうで、触れたら壊れてしまいそうで。
けれど、私は手を伸ばします。私には逃げる権利はない。ちゃんとサターニャさんと向き合って、謝らなければならないから。
でも、やっぱり怖い。
拒絶されるのが怖い。怯えられるのが怖い。…ここに来て湧き上がるのが、自分勝手な「恐怖」だというのですから、救いようがありませんね。
歯を食いしばって、涙が溢れそうになるのをぐっと堪えて、私はその言葉を紡ごうとします。
「ご、ごめん、なさ…」
「ラフィエルっ!!」
え?
38:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)12:07:21.286ID:QdVdDnwD0.net
「………ぐすっ、ひぐっ…」
「怖かった、怖かったよう……うわああんっ!」
「さ、サターニャ、さん?」
私は、サターニャさんに抱き着かれていました。
裸のまま、ずぶ濡れのまま、サターニャさんら私の胸に顔を埋め、遂には泣き出してしまいます。
私はどうしていいか分からなくなって、サターニャさんの頭をそっと撫でました。
謝罪の言葉も、自分への戒めも、跡形もなく吹っ飛んでしまいました。
「……もう大丈夫ですよ、サターニャさん」
わんわんと泣く、裸のサターニャさんを抱き締めながら、私は一つの決意をします。
「何があっても、私がそばに居ますから。絶対に離れたりなんか、しませんから」
そう耳元で囁くと、サターニャさんは潤んだ瞳で、私を見上げます。
「………ほんと?ラフィエルは、私を見捨てない…?」
「ええ。…もし私たちの仲を引き裂くような人がいれば、私が全部やっつけちゃいます」
「えへへ。嬉しい…」
サターニャさんは、そう消え入るように呟くと、にこりと笑いました。
その笑顔は、これまでに見たどのサターニャさんの笑顔よりも美しく、儚げで、私のこの気持ちはより一層強固なものになります。
この先何があっても、この手を離さない。
絶対に離してやるものですか。
41:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)12:12:32.844ID:QdVdDnwD0.net
ーーーー
「……ごめんなさい、ラフィエル」
「え?」
ひとしきり泣き明かしたあと、私はサターニャさんに服を着せ、一緒に家路につきました。
床でのびているゴミ共は放っておきました。サターニャさんの裸を撮影したスマホは、きちんと壊しておきます。
そして、夕暮れの帰り道、サターニャさんは、急に私にそんなことを言ってきます。
「私、アンタを信用できてなかった」
「………」
サターニャさんのいう言葉の意味は、痛いほどに理解できました。
サターニャさんが、このことについて私に全く相談してくれなかった理由。自分がいじめられているという事実を、私から懸命に隠そうとしていた理由。
「………いいえ、サターニャさんが謝る必要はありません」
あの人たちは、サターニャさんを虐めながら、確かに言いました。
『反応が面白いから』と。
それは、私がサターニャさんを弄る行為の動機そのものです。程度に差はあれど、サターニャさんを使って楽しもうとしていた、その一点においては、私はあのゴミとなんら変わりなかったはずです。
42:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)12:17:39.753ID:QdVdDnwD0.net
「私は」
「……謝らないで」
謝ろうと口を開くと、サターニャさんは立ち止まり、私の制服の裾をぎゅっと握ります。
「ラフィエルは、私を助けてくれた。私はそれが嬉しかった。…それだけで、いいじゃない」
俯きながら、ゆっくりと言葉を紡ぐサターニャさんに、私は何も言えませんでした。
ただサターニャさんのその言葉を噛み締めることしか出来ませんでした。
サターニャさんに赦された、認められた。その事実が、私の甘い部分をくすぐり、目頭がかあっと熱くなります。
自然と頬が緩みます。胸の中が、幸福で満たされていきます。
頭の中がサターニャさんでいっぱいになって…もう、それ以外のことは何も考えられなくなります。
やってしまった時には、もう遅かった。
唇に感じる、柔らかい感触。鼻腔をくすぐる、甘い香り。頭の中で弾ける、快楽の火花。
私は、サターニャさんにキスをしていました。
44:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)12:23:59.495ID:QdVdDnwD0.net
「……これは、違うんです」
急に冷静になった私は、そんな言い訳を始めました。
「ちょっと感極まっちゃったというか、別にヘンな意味じゃなかったというか…」
しどろもどろになりながら、わけのわからない言葉を連ねます。
サターニャさんは、そんな私をぽかんとした顔で見つめています。
「何をそんなに慌てているの?」とでも言わんばかりに、頭の上に疑問符を浮かべています。
そんなサターニャさんを見て、ついに私の頭は沸騰してしまいました。
「ま、また明日っ!」
ダダダダッ。
どうやら、私はすっかり逃げ癖がついてしまったようです。
「ちょ、ラフィエル!?待ちなさいよー!」
サターニャさんのそんな言葉が聞こえますが、構わず私は走り続けました。
「……ばかラフィエル」
45:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)12:25:28.158ID:QdVdDnwD0.net
「はぁ、はぁ……」
サターニャさんを撒くのは案外容易でした。神足通を使えばいい話なんですが、この精神状態で神足通なんて使えば、最悪内臓が吹っ飛ぶことも有り得たのでやめました。
本来なら、今日はサターニャさんと一日一緒にいてあげた方が良かったのでしょうが、そういうわけにもいきませんでした。
私がやらかしてしまったのもありますが…何より、詳しいお話を聞かなければならない人がいたからです。
「……全く、どういうつもりなんでしょうね」
昂る神経を抑え、目標地点を確認し…飛びます。
「……ガヴちゃん」
46:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)12:39:18.778ID:QdVdDnwD0.net
×××
なぜか顔を真っ赤にしたラフィと別れた後。
その日も、サターニャの様子はなんかおかしかった。
休み時間もやけに大人しいし、時々怯えたように周りを気にし始めるし。
さすがに不審に思った私とヴィーネが、「何かあったの?」と尋ねても、「なんのこと?」の一点張り。
サターニャのことだし、大したことはないんだろうが。それでもずっとこの様子だと、こっちとしても調子が狂う。
「…ねぇ、サターニャ本当にどうしちゃったんだろ?」
昼休み、私の席で弁当をつつきながら、ヴィーネはため息をつきながらそう言う。
「……わかんないけど、サターニャだしなぁ」
「でも、絶対何か変よ。いつもは昼休みになるとガヴの席に来るのに…メロンパン持って、そそくさとどこか行っちゃうし」
「何か見られたくないことでもするんじゃないの?別にそこまで気にすることないだろ」
半分は自分に言い聞かせるつもりで、私は言った。
ヴィーネはちょっと思案顔になると、「そうかなぁ…」なんて呟く。
「そうだよ、そうそう」と、私は焼きそばパンを口に運びながら吐き捨てた。
47:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)12:53:05.771ID:QdVdDnwD0.net
「サターニャ、一緒に帰りましょう?」
やっぱりサターニャのことが心配だ、と言い出したヴィーネは、急いで帰り支度をするサターニャに声をかけた。
「……え」
サターニャは少し怯えながら後ずさるが、ヴィーネはそれを許さない。
グイ、と詰め寄り、サターニャの手を握る。
「辛いことがあるなら、私たちに相談して?私たち友だちでしょ?」
「……ぅ、あ……」
サターニャは少し身をよじりながら、そんなヴィーネから逃れようとする。
48:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)12:55:49.418ID:QdVdDnwD0.net
こんな弱々しいサターニャは初めて見た。
私の知ってるサターニャは、良くも悪くも、喜怒哀楽がはっきりしていた。楽しい時は思い切り笑うし、悲しい時は思い切り泣く。
こんな風に、寂しげな泣き顔をするような奴じゃない。
「……放って、おいて!」
「サターニャ!?」
サターニャは、ヴィーネを突き飛ばすと、私の横を通り抜け、走り去ってしまう。
「ガヴ、何してるの!!」
「……?」
呆然と立ち尽くす私に、ヴィーネが呼びかける。
「追いかけるわよ!」
「……っ、あ、ああ!」
私は足をもつれさせながら、ヴィーネとサターニャの後を追った。
49:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)13:00:41.744ID:QdVdDnwD0.net
「……はぁっ、待ちなさい、サターニャ…?」
「……ん?」
思いの外、サターニャは早く捕まった。
サターニャが、下駄箱の前まで来て、靴入れを開けた瞬間…ピタッと、立ち止まってしまったからだ。
「どうしたの?サターニャ…」
私とヴィーネは、走るのをやめ、立ち尽くすサターニャにそっと近づく。
今度は、サターニャは逃げなかった。
「………ん?」
そこで、私たちはサターニャが立ち尽くしていた理由に気付いてしまう。
今日一日、サターニャの元気がなかった理由に、気付いてしまう。
サターニャの下駄箱からは、サターニャの靴がなくなっていた。
50:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)13:06:12.690ID:QdVdDnwD0.net
ーーーー
「………あったわよ、サターニャ」
「ん……」
そう言ってヴィーネが持ち上げたのは、どろどろに汚された、サターニャのスニーカー。
サターニャは俯きながらそれを受け取ると、「……ありがとう」とだけ言い、どろどろになったそれを履くと、私たちから離れようとする。
「ちょ、ちょっと待てよ、サターニャ…!」
自然とそんな言葉が出ていた。
気付けばサターニャの腕を掴んでいた。
凄まじい違和感に襲われる。自分が自分でなくなるような気がして、吐きたくなる。
それでも、私の口は止まらない。
「説明しろよ……何が、どうなってんだよ。わかんないよ。なんで、なんでお前が、なんで……」
出てくる言葉は支離滅裂で、果たして私は何を言いたいのやら、自分でも全くわからない。
私が掴んだサターニャの腕は小刻みに震えていて、サターニャの潤んだ瞳は確かに私を拒絶していた。
52:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)13:11:28.874ID:QdVdDnwD0.net
「……ちょっと、ガヴ」
ヴィーネは冷静だった。
興奮する私をそっと抑え、怯えるサターニャの手を優しく取り、まるで子供をあやすような声音で、ゆっくりとサターニャに問いかける。
「サターニャ、教えてくれる?…誰に、何をされたのか。今、クラスで何が起きてるのか」
「……ふぐっ、ぐすっ………」
堪え切れなくなったのか、サターニャは静かに泣き始める。
「………うん。わがっ、た……」
「よしよし」と、ヴィーネがサターニャの頭を撫でる。「ゆっくりでいいからね」「大丈夫だよ」…そんな言葉を繰り返しながら、何度も何度も。
私はそんなヴィーネとサターニャを黙って見ていた。
本当に私は空っぽだな、なんて。今更ながらにそんなことを思った。
53:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)13:16:22.799ID:QdVdDnwD0.net
「……嫌な視線を感じるようになったのは、一週間くらい前かしら」
「嫌な視線…?」
「うん。説明しにくいんだけど……あれは、悪意、なのかしら。…たまに舌打ちとか、ため息とか聞こえてきたりして、とにかく、すっごく嫌だった…」
「………」
「最初は気のせいだって思って特に気にしなかったんだけど……だんだん、舌打ちとかが聞こえる回数が増えていって、すごくこわくて……」
「……昨日、急に様子がおかしくなったのは、そのせい?」
「……あの時も、嫌な視線と、舌打ちが聞こえてきて、どうすればいいかわかんなくなって、そして……」
「落ち着いて話せよ。急かさないから」
「……うん」
「それにしても、今日のサターニャは昨日よりも更に様子がおかしかったわよ。なぜか、一日中私たちのことを避けてたし…」
「……今朝学校に来たら、上履きに画鋲が仕掛けられてて」
「………!」
「それで、全部わかっちゃって。嫌な視線や舌打ちの正体も、私がみんなにどう思われてるのかも…」
「……私たちに相談してくれなかったのは」
「…怖かったのよ。アンタたちも、私のこと嫌いなんじゃないかって思って。そう思い始めたら、止まらなくて。……馬鹿みたいよね」
ふふ、と。サターニャは自嘲気味に微笑む。私もヴィーネも笑うことは出来なかった。
その仕草から何まで、サターニャは昨日までの彼女とは別人のようだった。
本当はこれが、サターニャの本質だったのかもしれないけど。
54:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)13:18:27.793ID:QdVdDnwD0.net
「……誰の仕業かわかる?」
底冷えのするような声だった。
ヴィーネは、まるでバハムートでも倒しに行くかのようなオーラを放っている。けれど、それでいてにっこりとした笑顔が崩れないのが不気味だ。
「………え」
サターニャはこれまでにない程に怯えている。正直私もチビりそうだ。本気出したヴィーネってやべぇ。
「お・し・え・な・さ・い?」
「は、はいっ!」
57:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)13:23:52.078ID:QdVdDnwD0.net
「主犯なんて聞き出してどうすんだよ」
「…やることなんて一つでしょ?」
サターニャと別れ、ヴィーネと二人きりの帰り道。
ヴィーネはずっと悪魔モードで、サターニャから聞き出した主犯たちの名前をぶつぶつと呟いている。こわい。
「……まぁ、許せない気持ちはわかるけど」
「いじめを受けたのがサターニャだから、ってだけじゃないわよ。こんなこと、本当はクラスのみんなもしたくないに決まってる…」
サターニャが挙げた主犯の名前は、クラスの中でそこそこの地位を築いてる奴ら…所謂トップカーストってやつだ。
私みたいな奴には縁のない話だが、ヴィーネみたいに器用で友だちの多いやつにとっては、そいつらのクラスに与える影響を、ちゃんと理解できているんだろう。
「明日直に話すわ。クラスのみんなが見ている前で……流石にそこまですれば、なんとかなるでしょう」
「ああ、頑張ってくれ」
結局私は、最後まで傍観者を気取り続けた。
それには、「きっとヴィーネなら大丈夫」という身勝手な思い込みがあったのと。
サターニャのために動くというのがなんか悔しい。そんなクソみたいなプライドに、まだ私が振り回されていたからだろう。
58:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)13:28:51.315ID:QdVdDnwD0.net
ーーーー
「サターニャ!」
「あ、ヴィーネ……おはよう」
「……おはよ」
翌朝、私たちはサターニャと一緒に学校へ行った。他愛のないことを喋りながら、いつものやり取りを、出来るだけ再現して。
サターニャは時折私とヴィーネのやり取りに笑顔を見せることがあったものの、いつものようにとはいかないみたいだった。
まぁ、いい。いずれ、このサターニャも…いつもの元気なサターニャに戻ってくれる。いじめさえなくなれば、全てうまくいく。
その日も、サターニャの上履きには画鋲が仕掛けられていた。
「芸のない奴だな。私なら同じ手は2度も使わないぞ」
「何言ってんのアンタは…」
「ふふっ、そうね」
「そーそー。見下してやればいいんだよこんなことする奴なんて。こんな下らないことに、いちいちビクビク怯えてちゃ馬鹿らしいだろ?」
思ったことを言っただけ。そこに他意はないはずだった。
「……そうね」
でも、思ったように元気づけられてくれないサターニャを見て、無性に私は悲しくなる。
59:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)13:33:01.259ID:QdVdDnwD0.net
「ねぇ、あなた、どういうつもり?」
教室に入るや否や、ヴィーネは例のいじめっ子の席に詰め寄り、威圧的な態度で、そう言い放つ。
教室の目を集めるのには、それだけで十分だった。
「……あの月乃瀬さんが?」「どうしたんだろ」「何かあったのかな」「………」
口々にそんな言葉が聞こえてくる。中には、何かを悟ったように黙り込む人もいる。
私はと言うと、ヴィーネの邪魔にならないように、サターニャと一緒に扉の影からそれを見守っていた。
「はぁ?なんのこと?」
「これ」
ヴィーネがそいつの机に落としたのは、今朝サターニャの上履きに仕掛けられていた画鋲。
ざわざわとした喧騒が大きくなる。ヴィーネは完全に、この場でこいつを公開処刑するつもりらしい。
「それが?」
だが、そいつは全く動じる様子はない。ふん、と鼻で一笑し、ぎらぎらとした目でヴィーネを見つめている。
「とぼけないで、アンタが、サターニャを…」
60:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)13:39:29.911ID:QdVdDnwD0.net
瞬間だった。
ヴィーネが、「サターニャ」の名前を出した瞬間。
それまでざわついていた喧騒が一気に止んだ。教室の空気がガラリと変わった。
「………は?」
一瞬何が起きているのかわからなかった。
正しいのはヴィーネで、間違っているのは虐めている奴ら。それは絶対なはずだ。
なのに、この教室に流れるこの空気はなんだ?
この教室ではヴィーネが『異端』で、いじめっ子の方が正しい。そう言わんばかりに、ヴィーネに非難の視線が集中する。
61:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)13:43:20.413ID:QdVdDnwD0.net
ヴィーネも困惑した表情を浮かべていた。
だって、こんなことは全く予想していなかった。
私たちの知らない一週間の間に、ここまで教室の空気が腐りきっていたなんて、気付きもしなかったんだ。
「………え?あれ?」
「どうしたの?"胡桃沢サン"がぁ……どうかしたの?」
「う……あぅ、あ、あれ?」
ヴィーネは、何度も何度も言葉を紡ごうとするけど、なぜか声が出せない。そんなふうに見える。
「……ちがう、ちがうの……私は、私は……」
頭を抱え、俯いてしまう。相手の挑発的な視線から、突き刺さるクラスの人たちの視線から逃れるように、ふらふら、ふらふらと、ヴィーネは後ずさっていく。
私はヴィーネじゃないけど、その時の私とヴィーネの気持ちは多分同じだったと思う。
私も、その場から一歩も動けないほど、恐怖していた。その状況に。
頭では動かなくちゃいけない、ヴィーネを助けてやらなくちゃいけない、そんなことはわかっていたけれど。
体が麻痺したように動かない。金縛りって、こんな感覚なのかもな。
62:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)13:45:03.366ID:QdVdDnwD0.net
「………ご、ごめんなさいっ」
「……っあ、ヴィーネ…」
遂にヴィーネはその場から走り去ってしまってしまった。
私とサターニャの横をすり抜けて。
ヴィーネが去ったあと、教室はいつもの空気に戻る。
それがまた一層不気味で、私は酷い吐き気に襲われた。
そんなクラスを、ヴィーネを、私を。サターニャは生気の宿らない瞳で、じっと見つめていた。じっと……。
66:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)13:54:00.673ID:QdVdDnwD0.net
ーーーー
「………」
昼休み、私はヴィーネや、教室の空気から逃げるように屋上に来ていた。
教室は、朝に起きた出来事をなかったことにしたいようだった。
だからあの後、ヴィーネが迫害されるようなことは起きなかったし、むしろ何もかもがいつも通りで、変わらなかった。
私もヴィーネも、それを受け入れるしかなかった。
少なくとも、抗うことは出来なかった。
学生という社会の前には、天使だろうが悪魔だろうが、使いようのないコマに過ぎないのだ。
だから、もう、逃げるしかない。
その先に何もないとわかっていても、ひたすら逃げ続けるしかないんだ。
67:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)13:59:36.077ID:QdVdDnwD0.net
その日は鬱陶しいくらいの快晴で、風は不気味なまでに爽やかだ。
そんな日だからか、屋上はそこそこの人で賑わっていた。空いてるベンチをきょろきょろと探すが、なかなか見つからない。
そんなふうに辺りを見渡していると、ふと、空きのあるベンチを見つけた。
そこにはサターニャ一人が座っていた。
「……よう」
「……ん、ガヴリールじゃない。どうしたの」
「たまには、屋上も使ってみようかなって」
「そう」
私は自然と、その隣に腰掛けていた。その時の私の心の中は、きっと傲慢な善意に溢れていたんだと思う。
私が隣にいてやることで、少しはサターニャも救われる。そう思い込もうとした。そうすれば、逃げている自分、という現実から逃げることが出来るから。
68:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)14:04:46.875ID:QdVdDnwD0.net
「…………」
黙って、二人きりで、買ってきたパンを食べる。別にそれだけでも問題は無いはずなんだけど、その時の私は、会話が続かないことに激しい焦りを感じた。
何か話さなきゃ。どうにかして、沈黙を避けなきゃ。そんな焦燥が、私の思考回路を急き立てる。
とりあえず、何でもいいから……!
「……なぁ、ラフィに相談してみるか?あいつなら、なんとかしてくれるかも…」
そして、盛大に間違えた。
言ってしまった時にはもう遅かった。こんな時に、いじめの話題を出すやつがあるか。
「っ!ご、ごめんなサターニャ。今のは忘れてくれ…」
「……ラフィエルには、言わないで」
「え……?」
私のそんな謝罪を遮って、サターニャはそう懇願した。
「……消えちゃうのがこわい。それを見るのもこわい。……全部、もう、いやなの」
「……………」
その言葉の真意は伝わってこなかった。
だけど、私は頷くことしか出来なかった。
余計な言葉はたくさん出てくるのに、肝心な時は何も言えないんだ、私と言う奴は。
69:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)14:07:07.909ID:QdVdDnwD0.net
×私と言う→〇私という
その次の日も、私はサターニャと屋上で飯を食べた。その日は何を話すということもなく、ただ黙々と、パンを齧り続けた。
コンビニで買ったクリームパンは甘ったるくて、とてもじゃないが全部食べ切ることは出来なかった。
サターニャへのいじめは、日に日にエスカレートしていった。教室の中で、みんなが見ている前で、殴る蹴るの暴力を振るわれるのも当たり前になっていた。
私は教室にいる間、ずっと窓の外を眺めて過ごした。
ヴィーネとは、一切話さなくなった。
70:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)14:14:02.094ID:QdVdDnwD0.net
ーーーー
次の朝、久々にサターニャを道で見かけた私は、なんとなく、声をかけた。
「……おはよ、サターニャ」
「ひっ」
サターニャはびくっと肩を震わせ、恐る恐る私の方を見ると、少し安堵した表情で、「…なんだ、ガヴリールか」と呟いた。
その反応にショックを受ける前に、サターニャの腕につけられた、生々しい痣を見て、胸がきゅうっと締め付けられる。
「……一緒に行こう」
私はそれを見ないふりをして、サターニャの手を取ろうとした。
サターニャは私の手を取ろうとはしなかったけど、「うん」と頷き、学校まで一緒に歩いた。
会話はなかった。
73:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)14:18:40.838ID:QdVdDnwD0.net
教室に行くのも辛くて、学校に着くとすぐ、サターニャと一緒に、ぷらぷらと自販機がある踊り場まで行った。
前はよく昼休みにヴィーネと来た場所だ。
「……なんか飲むか、サターニャ」
「……いらない」
「じゃあ、私もいいや」
そんなやり取りをして、とすんと、壁にもたれかかる。
私は、会話がないことを窮屈だとは思わないようになった。それは、私が自分のためだけにサターニャと一緒にいるようになった、ということだ。
寂しさを紛らわせるために、過去の記憶の幻想を見るために、それだけのために、私はサターニャを求めた。
とばっちりを食らわないように、あいつらを刺激しないラインを見極めながら。
自分でもそのことは理解していたし、理解した上でサターニャを利用していた。
私は、完全に開き直っていた。
74:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)14:24:41.581ID:QdVdDnwD0.net
その日の昼休み、ラフィが屋上に来た。
そういえば、ラフィにはサターニャのこと言ってなかったな、なんて、今更ながらにそんなことを思った。
実際、ラフィのことなんてその時まですっかり忘れてたんだ。
なんというか、逃避本能とでもいうのかな。
サターニャから「ラフィエルには言うな」と言われて、けれど私とヴィーネだけじゃどうしようもなくて、どうすればいいのかわからなくなって……無意識のうちに、ラフィのことを考えるのを拒否してた。
「……ほんと久々だな。何してたんだよ」
「ちょっと私情がありまして」
ラフィだけは、全く変わらず、いつものノリでサターニャに絡んでいた。抱き着いたり、煽ったり、とにかく何から何まで昔のサターニャとラフィのやり取りそのままで。
久々に前のサターニャが見れた気がして、少し嬉しかったけど、同時に少し切なくもあった。
76:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)14:30:57.104ID:QdVdDnwD0.net
「そういえば、どうしてこんな所で?教室に行ってもいないから探しましたよ」
「……っ!」
何のことでもないように、ラフィは突然聞いてきた。
一瞬言葉に詰まる。けれど、ここで黙ってしまうわけにはいかない。黙ってしまったら、怪しまれる。怪しまれたら……なんだろう。
きっとここで私が言い訳を探しているのも、結局は私が逃げるためなんだろうな。
私は適当なことを言って、その場をはぐらかした。
「それと、ヴィーネさんはどこへ?」
「…………」
でもこいつは、私にそれを許してくれない。
本人には全くそのつもりはないんだろうが、「逃げるな」「向き合え」と、頬を叩かれ叱咤されているように感じた。
77:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)14:35:36.154ID:QdVdDnwD0.net
「……ヴィーネ、とは」
思い返される、一昨日の朝の光景。
あの日以来、ヴィーネとは話していない。何を話せばいいのかもわからない。そもそも、あいつが今、どういう風に過ごしているのかも、私は知らないのだ。
「……ちょっと、喧嘩した」
そんな言葉を発するだけでも、私の心臓は痛いくらいに鼓動し、全身の毛穴から、気味の悪い汗が溢れ出した。
ちら、とサターニャの顔を見る。サターニャはまた、あの怯えた目をして、震えて、今にも泣き出してしまいそうだった。
ラフィは「そうですか」とだけいうと、後は何も言ってこなかった。
嫌な沈黙が続いた。
正直、同じ学校に通っている時点で、サターニャのいじめを隠し通すことなんて不可能なんだ。
それは相手がラフィじゃなくても同じことで…私たちの行動には、なんの意味もない。
ただ先延ばしにしたい、その一心だ。その一心のために、私は平気嘘をつくし、傷ついて行くサターニャから目を逸らし続ける。
81:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)14:41:40.800ID:QdVdDnwD0.net
「……さぁっ!食事も済んだことだし……勝負よガヴリール!!」
沈黙を破ったのは、そんなサターニャの声。
「……サターニャ?」
ふとサターニャを見ると、サターニャはいつものように、訳の分からないポーズをとって、ドヤ顔で私を見つめてくる。
「うふふ、今度は何をするおつもりですか?」
「今日はこの、昨日魔界通販で買ったコレで―――」
置いていかれる私を尻目に、サターニャとラフィは「いつもの」茶番を始める。
涙を必死に堪えながら、けれどもそれをラフィに悟らせないように、必死に「いつも」を演じるサターニャを見て、私はなんとなく悟ってしまった。
―――ああ、サターニャは、また見捨てられてしまうのが怖いんだ。
私やヴィーネに、されたみたいに。
「……はっ、やってみろよ。返り討ちにしてやる」
「ククク…覚悟なさい!」
私の中で、何かが崩れていく音がした。
84:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)14:46:24.692ID:QdVdDnwD0.net
私たちはラフィに会う度に、「いつもの私たち」を演じて見せた。
サターニャのいじめはますます深刻になっていったが、サターニャはそんなことをおくびにも出さなかった。
ラフィと久々に会った日の放課後、サターニャはいじめ主犯格の奴らにどこかへと連れて行かれた。
たぶん、それが私が動く最後のチャンスだったんだと思う。でも、私はそれを見送った。
そして、それからは、何も変わり映えのない日々を過ごす。
学校に来て、ラフィの前で茶番をして、教室に入ったら窓の外を見て過ごし、学校が終わると、逃げるように学校を出る。
そんな生活が何日も続いた。
85:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)14:51:59.815ID:QdVdDnwD0.net
一度だけ、ヴィーネと廊下ですれ違ったことがある。
ヴィーネは、私やサターニャじゃない、他の女の子たちとお喋りをしながら、楽しそうに歩いていた。
「………」
ヴィーネは私に気付くと、突然目を見開いて、拳をぎゅっと握りしめ、何かと戦うように葛藤し始めた。
周りの子がその異変に気付いて、「大丈夫?」「どうしたの?」と声をかけるのが聞こえた。
私はその横を通り過ぎようとした。
「……ぁっ、ま、待って……!」
その袖を、ヴィーネが掴む。
ぎょっとした私がヴィーネを軽く睨むと、ヴィーネの手がそっと緩くなる。
「……悪いけど、急いでるから」
その隙に、私はヴィーネを振り払って、その場から離れようとする。
「待って!ガヴ!!」
ヴィーネの叫び声は無視して、私は早足で歩き続けた。
あいつはその後も何度か私の名前を呼んで呼び止めようとしたが、結局私は振り返らなかった。
87:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)14:56:35.198ID:QdVdDnwD0.net
まあ、要は、これだけのお話。
逃げて逃げて逃げ続けて、結果としてこの物語は最悪な形で終焉を迎える。
私は、ラフィが暴走する前に、ラフィやヴィーネと相談し、4人一緒に立ち向かわなきゃいけなかった。
だけどそれは結果論でしかない。
どこまでも弱い私たちは、後からそれを嘆くことしか許されない。
90:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)15:01:19.473ID:QdVdDnwD0.net
ーーーー
結界の壊された音が、頭に響いてくる。
流石に今の私の天使力じゃ、ラフィの神足通には敵わなかったようだ。
「……さて、お話を聞かせてもらいますよ。ガヴちゃん」
「話すことなんか何もないよ」
昨日が天界へのレポートの締切日だったから、今日あたり来るんじゃないかとは思っていた。
「それは、話すべきことがあると分かっている人の切り返し方です」
「……話すべきこと、か」
正直に話したところで、ラフィには理解してもらえないと思う。
私の……そしてヴィーネの、サターニャの行動は、数ある選択肢の中から、わざと一番有り得ないものを選んでいったものだから。
「あなたがもっと早く、サターニャさんの状況を教えてくれれば、…サターニャさんも、あそこまで酷いことはされずに済んだはずです」
「……んなことわかってるよ」
どうせ来るだろう、そんな憶測をはって、自分の心を守ろうとしていた時点で、自分が全く覚悟出来ていなかったのはわかっていた。
向き合いたくないから今まで逃げてたんだ。責められるのが怖くて逃げてたんだ。
私にそれを求めるな。もうどうでもいいんだ。どうせ元には戻らない。
91:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)15:06:39.209ID:QdVdDnwD0.net
「わかってんだよ!!全部、全部……!」
感情の昂りは、抑えることが出来なかった。
「お前と私は違うんだよ!!私はもう、ああなったらどうしようもないんだ!!何も出来ないんだ!!それが私なんだよ……」
クズで怠惰でどうしようもない駄目天使。それが私だ。
「……お前のしたことだって、意味なんかないんだ。いじめの標的がお前に移るだけ。最悪、サターニャへのいじめが更に酷くなるかもしれない……!」
目から大粒の涙を流しながら、私はひたすら叫び続ける。それも、相手が自分を責める隙を与えないための、打算的な行為。
ラフィは、そんな私を見て一切動じなかった。じっと黙って、私の言葉が尽きるまで、優しい瞳で私を見据えていた。
私はその目がたまらなく不快だった。
93:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)15:13:16.239ID:QdVdDnwD0.net
「……帰れ!!帰れよ!!私はお前なんかに話すことは何にもない!!」
「帰りませんよ」
目を瞑り、髪を振り乱して、ひたすらラフィを拒絶しようとする私に。
ラフィは、そんな私の頬を両手で抑え、じっと目を見つめてきた。
「絶対に、帰りません」
ラフィの瞳には、確かな覚悟が宿っていた。
「私は、諦めません。サターニャさんだけじゃなく、また四人みんなで笑い合えるような日が来るって、そう信じています」
なぜだかその言葉は、私の胸の中に、すうっと入ってきた。
きっと、それは私が最初に諦めてしまったもの。
途端に、自分の惨めさ、情けなさが、容赦なく私を責め立ててくる。
「………ぁ、あ」
私は初めて、「後悔」をした。
サターニャを助けなかったこと。ヴィーネを助けなかったこと。ラフィを頼らなかったこと。色んな後悔が、頭の中で目まぐるしく回って、回って……。
ラフィの胸の中で、私は泣き喚いた。
94:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)15:18:56.661ID:QdVdDnwD0.net
×××
ガヴちゃんは、私の胸の中で、「ごめんなさい、ごめんなさい」と言いながら、大声をあげて泣きました。
私はサターニャさんにしたように、ガヴちゃんの頭をそっと撫でながら慰めてあげます。
ガヴちゃんは具体的なことは何も言ってくれませんでしたが……けれど、辛い経験を通して、心が折れてしまっていたのはわかりました。
私に何も相談してくれなかったのも、そんな自分を、私に見られたくなかったから。
ガヴちゃんのそういった弱さ、脆さは、天界にいた頃から変わらないんですね。
私は少し安心していました。ガヴちゃんにここで完全に拒絶されていれば、もう打つ手はなかったからです。
これから私が今やろうとしていることは、私ひとりでも実行は可能ですが……そんなことに意味はありません。
サターニャさんの笑顔を取り戻す。そのためなら、私は何だってします。
95:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)15:20:27.125ID:QdVdDnwD0.net
「……ぐすっ、ぐす」
「……落ち着きましたか?」
「………うん」
「なら、ゆっくりでいいので、教えてください。今までのことを。…ヴィーネさんのことを」
「…わかった」
「……話し終えたら、私からも話したいことがあります」
「どうか、協力してください」
96:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)15:23:24.626ID:QdVdDnwD0.net
ーーーー
「サターニャさん♪一緒に学校行きましょう!」
神足通で家の中へと潜入した私は、まだ夢の中にいるサターニャさんを叩き起します。
「にゃっ!?……んあ?ら、ラフィ…?」
「寝起きなサターニャさんも可愛いです♪さ、学校行きますよ」
「……??んー……そうねー……」
どうやら寝起きで意識がまだハッキリしていないようです。
これはこれで都合がいいですね。このままサターニャさんを着替えさせて、学校へ連れて行ってしまいましょうか。
時刻は朝6時。私でも、いつもなら寝ている時間です。
さて、下克上の開始ですよ。
97:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)15:28:36.714ID:QdVdDnwD0.net
「……ん、ぁー……ん?んん?あれ?ここどこ?メロンパンは??」
「ここはいつもの通学路ですよー」
あ、目が覚めましたね。案外早かったです。
「え?な、なんでラフィエルがいるのよ!?」
「そろそろ自分の足で歩けますか?では、改めて学校へ行きましょー」
「ちょ、ちょっと何よどういうことこれ!?説明しなさいよ!」
「説明は後です。とりあえず学校に着くまでは、頭の中に浮かんだ疑問は全部飲み込んでいてください」
「そ、そんなこと言われたって……」
サターニャさんはそう言って、私の服の裾を掴んだまま、立ち止まろうとします。
…きっと、まだ怖いのでしょうか。
無理もないです。私はサターニャさんが受けた傷の、ほんの一部しか知りません。その辛さは到底理解できるものではないですし……理解した気になっていいものではない。
でも、寄り添うことはできます。
「大丈夫です。サターニャさんは何も心配することはありません」
「………」
「言ったでしょう?私は何があっても、サターニャさんの側を離れない」
「………!」
私はサターニャさんの手を握り、前へ歩き出します。
「だから、サターニャさんも……私の側を、離れちゃダメですよ」
「……うん!」
99:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)15:32:37.372ID:QdVdDnwD0.net
「………おはよう」
「……おはよ、ラフィ。……サターニャ」
久しぶりに、四人全員が集まりました。
「……ガヴリール。………ヴィネット」
サターニャさんは、私の手をぎゅっと握りしめ、まるで信じられないものを見るかのように、何度も瞬きを繰り返していました。
ヴィーネさんは、最初は少しはばかっていたようですが、ぐっと目を瞑り、サターニャさんに詰め寄ると。
地面に頭を擦り付けました。
「ごめんなさいっ!!本当に、私はっ……!何も出来なくなって、そんな自分が情けなくて、逃げて、逃げて……逃げてばっかりで……!」
「え、ちょ、ヴィ、ヴィネット!?」
「サターニャは私のことを許さないかもしれない。許してもらう資格なんてないのかもしれない。だけど、私は、…わたしはっ……」
「ああ、もう!顔上げなさいよ!!大丈夫だから!別に、アンタに怒ってなんかないわ!!」
「さ、サターニャ……」
101:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)15:37:37.622ID:QdVdDnwD0.net
私とガヴちゃんは、一部始終を見て、安堵の息を漏らします。
「……仲直りできたんですね?」
「……結局ヴィーネも、私と一緒だったから」
ガヴちゃんは、遠い目をして、その一言だけぽつりと漏らしました。
私は、それについて詳しくは追求しませんでした。それは、ガヴちゃんとヴィーネさんの物語だからです。
「サターニャには、全部終わってから謝るよ。……私の弱さが、あいつを追い詰めてたのは事実だし」
「……サターニャさんは、謝られるのが嫌いですよ」
「………え?」
「サターニャさんは優しいですから」
私はそう言って、唇をなぞります。
サターニャさんの、たまに見えるそういう心優しい部分が、サターニャさんの魅力の中でも、一際輝いていると私は思うのです。
102:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)15:39:54.831ID:QdVdDnwD0.net
「さて、作戦の概要を説明しますね」
学校に着いた私は、3人の顔を見渡して、そう話を切り出します。
思えば、私が率先して何かをしようとするのは初めてかもしれません。
イベントごとの時はヴィーネさんが、みんなで遊ぶ時はサターニャさんが、みんなを引っ張っていってくれていましたからね。
私はそんな日常を取り戻すために戦うのです。
「作戦は至って簡単です。やられる前にやってやれ。以上です」
「………なるほどな」
「そういうことね」
「えっ、なに?どういうこと?」
「そうと決まれば、早速あいつらの靴に画鋲を仕掛けましょう♪」
「私は教科書ズタズタにしてやる」
「えっと、私は、私は……机の上に、花瓶とか置くの。どうかな?」
「!?え、ちょ、アンタたち、何をする気よ!?」
103:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)15:48:44.091ID:QdVdDnwD0.net
サターニャさんは私たちの雰囲気にすっかり気後れしているようです。
「何なのかはわからないけど……嫌よ!!みんなが危ない目にあうなんて、絶対……」
そう言って、私たちを止めようとします。
サターニャさんの推測というか、勘というのは、ほとんど当たっていました。
目には目を、歯には歯を。
やられたなら、やり返してやればいい。
それが私の出した答えです。
教室の空気がサターニャさんを虐げるなら、その空気を変えてやればいい。相手が徒党を組むのなら、こっちも大人数で対抗してやればいい。
学校中を巻き込んで、全面戦争を仕掛けてやる。「いじめ」を「大喧嘩」にしてしまう。
力技ですし、辛い戦いになるのは間違いありませんが、もう私たちには、こうするしかないのです。
105:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)15:57:35.976ID:QdVdDnwD0.net
「私たちだって、サターニャさんだけが傷付くのはもううんざりなんです」
「っ……」
誤魔化しても仕方ないです。私は、本音でサターニャさんを説得します。
「誰か一人が傷付くなら、その傷をみんなで分け合えばいい。それが仲間です。それが友だちです」
「……仲間?」
「そうです。……私たちは、サターニャさんの仲間です」
ガヴちゃんも、ヴィーネさんも、私の言葉にちゃんと頷いてくれます。
「……私も、ガヴちゃんも、ヴィーネさんも。最初は間違えてしまいましたが、その事実だけは変わりません」
「………」
「ですから、サターニャさんも、私たちを頼ってください。そして私たちが辛い時には、頼らせてください」
差し出した手を、サターニャさんはぎゅっと握り返してくれました。
もう、誰にも負ける気はしません。
2人でもこんなに心強いんです。4人もいれば、無敵です。
111:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)16:05:05.081ID:QdVdDnwD0.net
「徹底的に、やりますよ」
「……ああ」
「わかってる」
「………ああ、もうっ!!よくわかんないけど!やってやろうじゃない!!」
この世界に降りて、サターニャさんを好きになって。
私は素直になりました。
欲しいものを、素直に欲しいと言えるようになりました。
素直に、好きなことだけをして生きていくと決めたんです。
だから、それを遮るものは、全力で壊します。
例え、天から堕とされようとも。
112:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)16:06:48.421ID:QdVdDnwD0.net
「……ふう」
「お疲れ、ラフィエル」
「サターニャさん。いやー、先生に怒られるなんて、初めての体験ですよ」
「アンタは優等生だったものね…」
「まぁ、それで、サターニャさんの笑顔が見れるなら、安いものです」
「………うん、ありがとう。アンタがいなかったら、きっと私、とっくにダメになってた」
「うふふ。そう言ってもらえると嬉しいです」
113:以下、\(^o^)/でVIPがお送りします2017/04/07(金)16:07:49.070ID:QdVdDnwD0.net
「……ねぇ、ラフィエル」
「なんですか?」
「……あの、この前の、アレ。……ほら、ラフィエルが私を助けてくれた日の、その……」
「ああ、キスのことですか?」
「!?そ、そうよっ!!あれどういう意味なの!?教えなさい!!」
「ふふっ、サターニャさんは本当に可愛いですね♪」
「だから、さっさとアレはなんだったのか―――」
そしてもう一度、私はサターニャさんに口付けをします。
私も、もう逃げません。
せっかく守った関係が、壊れてしまうかもしれないけれど。
壊れてしまっても、もう1度組み立てればいい話なんです。
だから、私は今度こそ伝えます。
「心の底から、愛しています。サターニャさん」

関連記事

  1. 毒ユッケ提供店「毒肉けずるのもったいないと思った」
  2. 横浜のチェーン店「焼肉酒家えびす」19歳女性からO111 10代の男性も、新たに食中毒の症状
  3. 人類を食料に!?地球を支配する爬虫類人「レプティリアン」の恐るべき陰謀!